ヒメオオクワガタ
学名:Dorcus montivagus montivagus
オオクワガタよりも、ノコギリクワガタよりも、海外のどんな希少種よりも。
ヒメオオクワガタは、僕の一番好きなクワガタムシです。
2017年の夏、子供の頃から憧れ続けたこのクワガタを採集するため、初めて福島県の西端「檜枝岐村」を訪れました。関東から見ると「尾瀬の奥地」である檜枝岐は、地図で見る限りにおいては僕の地元・群馬との県境なのですが、実際には那須や日光のほうからグルッと回り込まなければアクセスできず、片道4時間弱を要します。
最初の挑戦ではその姿を目にすることさえ叶いませんでしたが、その後も遠征を重ね、なんとか満足のいく採集が出来るようになりました。檜枝岐、そしてヒメオオの魅力に惹かれ、気付けば2ヶ月の間に5度の訪問。完全にハマってしまいました。ヤナギの細枝に付く大型のヒメオオを発見した時には、えも言われぬ興奮を覚えます。・・・こんなん書いてたら行きたくなってきた。
そして、採ったそのあとは・・・もちろんブリードに挑戦です!
できねェと思うけど。
breeding
2017年9月
さて、それでは飼育を始めましょう。
ヒメオオが生息するのは、平地に比べ大幅に気温が低い標高1000mを超えるような高山帯です。そのため、飼育中も管理温度は24℃を上回らないようにし、出来る限り低温を心がけます。エサにかんしては通常のゼリーで全く問題ナシ。華奢な体のわりに結構食います。
♂♀の仲も良く、成虫の飼育はとてもかんたん。
そして繁殖。とはいえ産まなきゃ産まないで元々です。なんたってヒメオオですし。
では、セットするにあたって少し下調べをします。
なになに、温度は低く?やっぱりね。
え、堅いブナ材が良いと?なるほどね。
水分は多め?ふむふむ。
マットと材の境に産むの?へぇー。
じゃあこうしよう!
もう
ふつうにセット
だって結局どれもしっくり来ないんだもん(?)。
フツーにやることにしました。具体的には、クヌギ材やコナラ材、カワラ植菌材を産卵一番で半埋めにしたプラケ中、というもの。気に入ってくれるかどうかは、もう知らん。このまましばらく放っときます。
2018年9月
産卵セットに入れたまま越冬させ、迎えた翌春。
材を齧り出した!!!
4セット中3セットで動きが見られました。人気だったのは堅めのコナラ材。
実際産んだのは2頭で、たったわずか計5頭の回収ですが、F1採っただけでもう及第点!ホントに産んだ・・・
とりあえずまとめよう。
@産卵時期は春から夏。活動初年度には産まない?
A材は普通のコナラ材でOK。選り好みするので複数入れる。堅めで良質なヤツ。
B産卵時の推定温度は21℃前後。夏は24℃が上限になるよう善処。
得た感触としては、ざっとこんなところでしょうか。
室温を極力抑えているとはいえ、1年を通して生息地よりも高温での管理になっていることは間違いなく、体内時計を狂わせてしまっているかもしれません。
来春以降も検証してみます。
でもこれ成虫になってくれるだろうか?産むのは産んでも、幼虫で落ちるという話も聞く・・・
エサはカワラ菌床にしようと考え、ブリーダーズファームの大夢Kブナの500ccを選びました。投入から2ヶ月ほどで食痕が見え、2齢になったことが確認できたので、ここまでは順調と言っていいと思います。
サイズは構わない!無事に成長してくれ!!!
2020年8月
2018年にセットした4♀からは、結局7頭のF1を得ました。
エサはカワラ菌床の500ccで、2本目から800ccへ容量アップ、エアコンで通年管理しましたが室温は結構不安定になってしまいました。その影響もあってか、2頭の幼虫を失ってしまいます。
そしてついに、割り出しから1年ほどで2頭が羽化。最初に羽化したのは♀32mm、しかしこれは後食を待たずに2ヶ月ほどで死亡。貴重なヒメオオの処女♀だったのですが、残念です。難しい・・・
2頭目の羽化は♂で、40mmちょっとですが・・・
羽化不全・・・!!
クッソ!!
元気なのが不幸中の幸いですが、これでは手放しで喜べません。残りの兄弟に賭けます。
ここでエアコンを新調し、21℃固定で管理します。
この時点で残るは、♂と思しき3頭。
このうち2頭が蛹化し、ひやひやしながら経過観察。
万全を期したいのですが、片方の蛹室の状態が悪化、羽化した直後に救出することに!!
どれどれ・・・
やった、完品だ!!
幼虫期間は2年弱、最終計量は7.0gだった個体です。固まった後にノギスをあてると、47.7mmでした。
思っていたより大きい!
47mmって、実際ヤナギについているとかなり大きく感じるサイズです。
ついでもう片方、7.5gだった個体も羽化。
これも完品!!良いサイズ!!
こっちも47mmある!
すごい!
ちゃんとヒメオオの形をしてます!!!←??
この2頭が羽化したころに、最後の1頭が蛹化。
最大で9.4gまで伸びた、最も期待できる個体です。
割り出す!!
今までで一番でかい!!!
はやくノギス!!
やったー!!!!!
51mm!望外のサイズ!!
最ッッッ高!!!
もう嬉しくて嬉しくて、テキストのみでの更新も珍しくない当HPにおいて、こんなに画像に溢れた飼育記になっちゃいました。いやぁお恥ずかしい。
1周させてみた感触としては、産みさえすればソコソコ見れるサイズにはなる、という感じでしょうか(ちなみに2019年の採卵には失敗してます)。幼虫はとりあえずカワラ菌床に突っ込んどけばいいと思います。初挑戦のF1でいきなり50台が出るんですから、大きくするだけならそう難しくはないのかもしれないですし、ビギナーズラックかもしれません。体重は9.4gで51mmなので、今後は最低10g、欲を言えば12gが目標になりそうです。
@産卵が気まぐれ、数が採れない
A幼虫がちょっと落ちやすい
この辺が課題でしょうか。特に@ですね。
ひとまず更新はここまでにしますが、累代はまだまだチャレンジを続けます!